日本臨床外科学会雑誌
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外傷性胆嚢破裂の1例
皆川 輝彦渡辺 正志鈴木 康司大城 充小林 一雄
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2001 年 62 巻 3 号 p. 767-771

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抄録

外傷による胆嚢損傷は比較的稀であるとされており,腹部鈍的外傷のうち胆嚢損傷の占める割合は2%前後と報告されている.本邦では検索しえた範囲で45例の報告がみられた.今回われわれは,胆嚢損傷の1例を経験したので報告する.症例は82歳,男性.自宅にて転倒し右季肋部を強打,その後5日経過して他院受診し肝挫傷,右血胸が疑われ当院を紹介された. CTにて,肝周囲に液体の貯留を認め,腹腔穿刺で胆汁が引けたため,胆汁性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.開腹すると,肝下面を覆うように大網が癒着しており,それを剥離すると胆汁流出が見られた.胆嚢を挙上すると胆嚢後面より胆汁の流出が見られた.胆嚢破裂と診断し,胆嚢摘出術を施行した.摘出した胆嚢の体部に3.5mmの穿孔を認め,その付近には肝組織が付着し肝床部よりの胆嚢剥離が考えられた.本症例は外傷後5日間経過したのち当院来院し,診断治療を行ったが,合併損傷もなく,術後経過良好であった.

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