日本臨床外科学会雑誌
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腹壁瘢痕ヘルニアと成人臍ヘルニアの同時嵌頓の1例
松本 日洋川田 研郎鴻野 雅司
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2001 年 62 巻 3 号 p. 827-830

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抄録

症例は, 66歳男性.腹部腫瘤,腹痛を主訴に当院を受診した.有痛性の腫瘤を臍部に有し,上腹部正中線上に手拳大の腫瘤を認めた.血液生化学的所見で白血球, CRPは正常で,発熱もなかった.腹部単純X線でイレウスを呈し,腹部CTで臍部に小腸,大網の腹壁からの脱出と,上腹部正中線上に大網の腹壁からの脱出を認めた.以上より腹壁瘢痕ヘルニアおよび成人臍ヘルニアの同時嵌頓と診断し緊急手術を施行した.ヘルニア内容は,臍部は回腸,大網であり,上腹部正中線上部は大網であった.発症後約5時間で比較的早期の手術が施行され,腸管を切除することなく大網の部分切除のみで嵌頓が解除可能であった.術後経過は順調であった.成人嵌頓臍ヘルニアが腹壁瘢痕ヘルニア嵌頓に合併した報告は検索上なかった.閉鎖した臍輪に後天的に脆弱部が出現し,これに腹圧の上昇が作用して発症するという成因を示唆する症例として興味深いと考えられた.

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