2001 年 62 巻 5 号 p. 1315-1320
Spigelヘルニアはほとんどが後天性に発生する極めて稀な腹壁ヘルニアである.今回われわれは,イレウスを合併した本邦第1例目のSpigelヘルニア多発例を経験したので報告する.症例は82歳女性で,肥満体であった.以前より,腹壁ヘルニアがあるも症状を欠いていたので放置していた.平成12年1月,腹痛と嘔吐にて発症し,入院した.腹部CT検査と小腸造影検査にて2つのSpigelヘルニアがあり,うち小さなヘルニアで回腸が嵌頓し,イレウスをおこしていた.全身状態や合併症を考慮して,保存的治療を行うも軽快せず,開腹手術を行った.開腹所見では,腹直筋外縁のSpigel腱膜より皮下組織に, 2cm大のヘルニアが脱出していた.ヘルニア嚢内には嵌頓した小腸と大網があったが,虚血性変化が軽微であったため,腹腔内に還納し,ヘルニア嚢切除およびヘルニア門を縫合閉鎖した.術後経過良好にて退限した.