2002 年 63 巻 10 号 p. 2374-2380
高齢者胃癌治療では,根治性の追求とともに合併症や早期他病死を避けるための侵襲の軽減が求められる.今回われわれは治癒切除術が施行された80歳以上の高齢者胃癌49症例を対象として術後予後因子の検討を行った.手術後5年以内の死亡は原病死6例,他病死10例の計16例であった.原病死例では,癌進行度と胃切除範囲が有意な予後要因であったが,リンパ節郭清度の影響は認められなかった.他病死例においては,進行度と術後合併症の有無が有意であり,術後合併症の発症は術中出血量との相関が認められたが,術前諸因子から術後合併症の発症を予測することは困難と考えられた.以上より,進行度が原病死,他病死の双方に影響を有する一方で,リンパ節郭清度の影響は認められず,術中出血量が術後合併症の発症に影響を与えていることから,高齢者胃癌外科治療では必要最小限の切除が望ましいものと考えられた.