日本臨床外科学会雑誌
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術後16年目に卵巣転移をきたした乳癌(浸潤性乳管癌)の1例
館花 明彦宇井 義典酒井 滋山川 達郎水口 國雄福間 英祐
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2002 年 63 巻 10 号 p. 2390-2394

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抄録

症例は64歳,女性.主訴は下腹部腫瘤. 48歳時,左乳癌に対して定型的乳房切断術が施行された(T2, N0, M0充実腺管癌). 59歳時に発症した肝,骨転移に対し,化学療法の著効(CR)を認めた.平成13年8月(64歳)腫瘍マーカーの上昇より乳癌再発を疑い,精査を開始した.また同時期に下腹部腫瘤を触知,本人も自覚した.各種画像検査にて両側卵巣腫瘤像を認め,他臓器には腫瘍所見はみられなかった.転移性卵巣腫瘍と判断し,消化器症状の発現・増悪もあり手術となった.灰白色・多房性の卵巣腫瘍を切除,病理学的に充実腺管癌の所見を呈し,乳癌卵巣転移と診断された.乳癌術後16年目の卵巣転移は稀であるが,予後は極めて不良と考えられる.しかし内分泌・化学療法の奏効する例の多い乳癌では,集学的治療により長期延命が期待できる可能性があり,症例によっては積極的な治療を検討することも重要と考えられる.

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