2002 年 63 巻 10 号 p. 2564-2569
症例は69歳,女性.右下腹部痛と腹部膨満感を主訴に近医受診し,右腹部腫瘤を指摘され,当科紹介入院となった.腹部CTにて腫瘍は右後腹膜腔にあり最大径11cmで,不均一な内部造影所見を呈しており,下大静脈を巻き込んでいた.経静脈的腎盂尿管造影では右尿管は右側方へ圧排偏位しており,右腎は軽度の水腎症を認めた.後腹膜腫瘍と診断し,手術を施行した.腫瘍は右後腹膜腔にあり,下大静脈壁の一部に浸潤を疑う強固な癒着を認め,合併切除を行った.肉眼的には, 11×9.5×6.5cm大の黄白色の被膜を有する腫瘍で,病理組織学的には悪性神経鞘腫であった.術後9カ月現在再発認めず,外来通院中である.後腹膜原発腫瘍に占める神経鞘腫は, 1.2~5.7%と少なく,悪性のものは予後不良とされている.その特徴について若干の文献的考察を加えて報告した.