2002 年 63 巻 12 号 p. 2926-2929
腹腔内膿瘍をきたした胃壁膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は73歳,女性.腹痛・全身倦怠を主訴に受診,エコーにて胆嚢の腫大を指摘され,急性胆嚢炎として入院し保存的に加療された.症状は一時改善したが,発熱とCRPの上昇を認め, CT上胆嚢腫大と肝左葉背側,脾背側,胃後壁に多量の腹水の貯留を認め腹腔内膿瘍の診断となった.そこでPTGBD (E. aerogenesが検出)および腹腔内膿瘍ドレナージ(K. oxytoca & P. aeruginosaが検出)を施行した.ドレナージにより膿性腹水は減少し手術となった.術中所見で胃体下部後壁粘膜下に8×6cm大の粘膜下腫瘍類似病変を認め,幽門側胃切除・横行結腸部分切除を行った.病変内部より腹腔内膿瘍と同様の膿汁が採取され培養ではK. oxytocaが検出された.病理所見で病変はSSを主座とする胃壁膿瘍との診断であり培養結果などから今回の腹腔内膿瘍の原因と考えられた.