日本臨床外科学会雑誌
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髄膜播種を伴った劇症型乳癌の1例
田島 秀浩泉 良平竹下 雅樹永井 昇松村 昭宏村岡 恵一福島 亘角谷 直孝廣澤 久史日野 祐資齋藤 勝彦
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キーワード: 乳癌, 劇症型乳癌, 髄膜播種
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2002 年 63 巻 4 号 p. 857-861

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抄録

比較的稀な転移形式である髄膜播種を伴った劇症型乳癌を経験したので報告する.症例は右乳房腫瘤と複視を主訴に外来を受診した62歳の女性.既に遠隔転移(骨,肝)を伴う右乳癌(T2, N1以上, M1, Stage IV)で,ホルモンレセプター検索のために乳房切除のみを行った.複視の原因は当初は小脳橋角部の髄膜腫によるものと考えられていたが,術後新たに脳転移が出現したため, γ-ナイフ治療を行った.これにより脳圧亢進症状は改善したが化学療法を導入する間もなく急速に進行した肺癌性リンパ管症により患者は全経過3カ月余りで死亡した.剖検では,広範な血行性転移,髄膜播種,腹膜播種および全身のリンパ節転移を認め,複視は髄膜播種が局所的に増大したことが原因であると診断された.乳癌は癌腫の中でも比較的予後良好で経過も長いとされているが,稀に発症後急速に進展して死の転帰をとる劇症型が存在する.本例は急激な経過より劇症型乳癌と考えられた.

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