2002 年 63 巻 4 号 p. 875-878
症例は59歳,男性. 2年前より胸部異常陰影を指摘されていたが,放置していた. 2000年9月職場検診胸部レントゲンにて左中肺野腫瘤陰影を指摘され,胸部CTでは,左舌区にair bronchogramを有する腫瘤を認めた.悪性腫瘍を疑い,気管支鏡下肺生検するも確定診断が得られず, CTガイド下肺生検ではIow-grade B cell lymphoma,炎症性変化の疑い,という診断であった. 2000年11月,診断・治療目的にて胸腔鏡下腫瘍切除術を施行した.腫瘤は3.8×2.9×2.2cm, 肌色,弾性軟,辺縁は比較的平滑て,病理診断はMALTリンパ腫であった.術後経過は良好で,再発の兆候なく外来経過観察中である.
肺原発悪性リンパ腫は癌に比べてはるかに稀であるが,そのうち最も多く見られるMALTリンパ腫の1例を経験した.予後は良好で, 5年生存率90%以上である.文献的考察を加えて報告する.