2002 年 63 巻 4 号 p. 940-944
大腸脂肪腫は比較的稀な粘膜下腫瘍であるが径が大きくなるにつれ,腸重積を合併して発見される頻度が高い.今回われわれは術前にCT,内視鏡検査にて脂肪腫の診断を得て腹腔鏡補助下手術を選択できた症例を経験したので報告する.症例は77歳,男性.左下腹部痛にて近医を受診,注腸造影にて下行結腸下端に表面平滑な円形腫瘤とcoiled spring signを認め,腸重積の診断にて当院紹介となる. CTにて下行結腸内腔に径約3cmの内部が-93HDと脂肪組織に近い濃度のCT値を示す円形の腫瘤を認めた.内視鏡検査ではcushionsignを示す柔らかな粘膜下腫瘍の所見を示しており大腸脂肪腫と診断,腹腔鏡補助下に結腸部分切除を行った.病理組織検査では5×2.5×2.7cm大の成熟した脂肪腫で,漿膜下より発生し腸管内腔に向かって亜有茎性,気球状の発育を示していた.巨大な大腸脂肪腫で術前に質的診断が得られた症例は侵襲の少ない腹腔鏡補助下手術の良い適応であると考えられる.