63 巻 (2002) 6 号 p. 1491-1495
症例は18歳,女性.貧血の症状を呈し半年間鉄剤の投与を受けていたが,下血を契機に大腸内視鏡検査を受け横行結腸癌と診断され,当科にて右半結腸切除術を施行した.腫瘍はびまん浸潤型を呈し,腹膜播種, 4群リンパ節転移を認めた.病理学的診断はsignet-ring cell carcinoma (si (omentum), 1y3, v0, n4(+), P3, H0, histological stage IV)であった.大腸癌の家族歴はなかったが,印環細胞癌の発症機序を知るべくinformed consentの上で大腸癌関連遺伝子の検索を行った. K-ras,p53は変異を認めず, APC, DCCではDCCのloss of heterozygosity (LOH)を認めた.またmicrosatellite instabilityは認めなかった.化学療法を行ったが,癌性腹膜炎にて術後1年4カ月で死亡した.印環細胞癌および若年者大腸癌の臨床病理学的,分子生物学的考察を加えて報告する.