63 巻 (2002) 8 号 p. 2058-2060
虫垂嵌頓鼠径ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は77歳の男性.1週間前から右鼠径部の膨隆を自覚,その後増大傾向を認め疼痛も伴うようになってきたため,近医受診したところ右鼠径ヘルニア嵌頓が疑われ,当院紹介入院となった.転院後,嵌頓内容は断定しえなかったが,右鼠径ヘルニア嵌頓が強く疑われたため緊急手術を施行した.手術所見は右鼠径ヘルニア内に虫垂が嵌頓し先端は壊死に陥っており,ヘルニア嚢内に膿汁の貯留をきたしていた.同一創にてヘルニア根治術・虫垂切除術を施行し,残存した末梢側ヘルニア嚢内にドレーンを留置し閉創した.鼠径ヘルニア嵌頓において虫垂を内容とするものは極めて稀であるが,イレウス症状を欠き,鼠径部超音波像にて層状構造が描出された場合,本症を疑うことが可能と思われた.