63 巻 (2002) 9 号 p. 2141-2145
胸部外傷後,偶然発見された心膜嚢胞の嚢胞液のCA125 (141, 906U/l)が異常高値を示したのでこの心膜嚢胞の悪性化を疑い嚢胞摘出術を施行した症例を経験したので報告する.症例は42歳,男性. 4mの高位から転落し,当院受診した.精査を行ったところ,腰椎亀裂骨折と縦隔腫瘍を指摘された.整形外科的治療のみ受け,軽快退院した. 3ヵ月後胸痛が生じたため受診した.胸部X線写真では,心胸郭比の拡大があり,胸部CT検査, MRI検査で左心横隔膜部に大きさ5.0×3.8×4.5cmの嚢胞を認めた.血中の腫瘍マーカーは正常であったが,嚢胞液を穿刺し測定したところ腫瘍マーカーが異常高値を示したので心膜嚢胞の悪性化を疑い胸腔鏡補助下に摘出術を施行した.病理組織学検査では,心膜嚢胞で良性と診断された.本症の治療にあたって,悪性化例の報告もあり,治療方針を十分に考慮して選択すべきであると思われた.