2003 年 64 巻 1 号 p. 184-188
接触スポーツによる膵損傷は稀とされており,ラグビーによる受傷の報告例はない.また,外傷による膵出血に対するinterventional radiology (IVR)による初期治療の報告も認められない.今回われわれは,ラグビーにより,随伴する外傷なく単独で受傷した外傷性膵損傷による出血に対し, IVRを施行し良好な経過を得たので報告する.症例は18歳,男性.ラグビーの練習試合中に腹部を蹴られ,心窩部,背部痛を主訴に受傷2日後に当院来院.血清アミラーゼの高値と腹部CTにて膵頭部の血腫と外傷性膵炎の所見を認めたため,入院,保存的に治療した.受傷後, 9日目に再出血し,前上膵十二指腸動脈の塞栓術を施行した.その後順調に経過し,退院した.膵損傷は比較的軽度な鈍的外傷によっても起こり得,治療の選択に対しては詳細な画像診断が重要であり,選択的動脈塞栓術は膵出血の治療においても有用である.