日本臨床外科学会雑誌
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一区域以下の肝切除における流入血遮断法の検討
田中 邦哉松尾 憲一斎藤 修治永野 靖彦藤井 義郎遠藤 格関戸 仁渡会 伸治嶋田 紘
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2003 年 64 巻 1 号 p. 24-30

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抄録

1区域以内の肝切除100例を,流入血遮断により無阻血(N群),全肝遮断(P群),選択的遮断(S群)の3群に分類し,全肝阻血と選択的阻血の適応,問題点を検討した.なお,遮断は15分間の阻血, 5分間解除を原則とした.
慢性肝炎(慢肝)・硬変例では, N群の術後第14病日のGOT値がP群に比較し低値(P<0.05)であったが, P群とS群では差はなく,術後合併症にも差はなかった.一方,正常肝例ではS群の手術時間,切除肝重量,切離面積が,いずれも高値であったが,術後結果はP群の血小板(PLT)減少,ビリルビン(Bil.)上昇が顕著であり, 1, 5病日のPLT (12.6±4.3 (/mm3), 15.2±4.4)が, S群(16.7±6.5, 20.2±5.1)に比較し低値(P<0.05), 1病日のBil. (3.1±1.6 (mg/dl))がN群(1.9±1.0)に比較し高値(P<0.05)であった.
以上より,慢肝・硬変例のPringle法は選択的遮断と差はなく,正常肝例では選択的遮断により術後肝障害を軽減しうると考察できた.

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