2003 年 64 巻 1 号 p. 31-36
【目的】総胆管結石に対する内視鏡的治療として乳頭バルーン拡張術(EPBD)と乳頭切開術(EST)を比較し, EPBDが第1選択の手技となりうるか検討した.【対象】総胆管結石症の患者81例. 1996年以前に32例にESTを施行,以後30例にEPBDを施行. 19例は内視鏡的治療なしに開腹手術を施行.【結果】内視鏡的治療の完遂率はEPBD導入以前は60%であったが,導入後は86%と有意に高くなった. EST例とEPBD例の機械的砕石の施行率と結石除去の終了までの内視鏡施行回数は差がなく,いずれも直径10mm未満で3個以下の結石の場合に,単回の内視鏡的治療で結石が除去できる可能性が高かった.術後血清アミラーゼ値はEPBD例で有意に低値であり, EPBD例に重篤な合併症を認めなかった.【結論】EPBDはESTと比較して適応症例が多く,安全性が高いことから,総胆管結石治療の第1選択となりうる.