64 巻 (2003) 11 号 p. 2736-2740
食道癌術後の合併症により胸部食道が欠損状態になった症例に対し,前胸壁皮弁を用いた再建術を施行した.患者は59歳,男性.平成11年4月食道癌および胃癌にて手術を行った.術後合併症により再建食道を断端閉鎖し,頸部食道を前頸部に開口したため胸部食道欠損状態となった.緑膿菌肺炎をたびたび起こしており感染防御能の低下が示唆された.感染のriskが高かったため安全性を第一に考え,前胸壁皮弁による食道再建を計画した. 13年11月, 1回目の手術で空腸を腹壁に固定し,左側の皮弁を作製した. 14年4月, 2回目の手術で右側の皮弁を作製し,左右の皮弁を縫合してロール作製を行った. 9日後に植皮し再建食道を完成した.皮弁作製時には穿通血管を温存し筋膜を付けることが重要である.前胸壁皮弁の欠点はロール下部での食物の停滞であるが,術式の工夫により軽減できた.安全性を優先する場合,前胸壁皮弁による再建術は有用であると考えられた.