2003 年 64 巻 12 号 p. 3087-3091
症例は57歳の男性.腹部腫瘤の診断で近医で開腹術を受けたが,摘出不能と判断されそのまま経過観察されていたところ, 10カ月後に突然激しい腹痛をきたしたため当院に救急搬送された. CTで下腹部に直径15cmの被膜を有した境界明瞭な腫瘤が認められ,内部は液体と空気が混在して膿瘍を形成していた.敗血症におちいっていたため緊急手術を行い,膿を1,600mlドレナージした.一時多臓器不全におちいったが,抗生剤および血液浄化で軽快した.その後CT, MRIで回腸原発粘膜下腫瘍の瘻孔形成による膿瘍と診断し,摘出術を行った.免疫学的検査で回腸腫瘍はc-kit, CD34, smooth muscle actin陽性, S100, desmin陰性であり,回腸GISTのsmooth muscle typeであった.回腸GISTが膿瘍を形成し,敗血症におちいった例は極めて稀であるため報告した.