2003 年 64 巻 12 号 p. 3144-3147
閉塞性黄疸で発症し,門脈浸潤を伴う膵頭部充実性腫瘍が疑われた漿液性嚢胞腺腫の1例を経験した.症例は71歳,男性,胆管ドレナージからの造影で下部胆管に高度の狭窄を認めた.造影CTにて均一な増強効果を示す腫瘍が膵頭部に認められ,末梢膵管は拡張していた.血管造影検査では腫瘍濃染像を呈し,門脈に狭窄像と側副血行路を認めた.胆管,膵管および門脈に浸潤する悪性の膵頭部充実性腫瘍を疑い膵頭十二指腸切除術を行った.腫瘍の割面には嚢胞構造は認めなかったが,組織学的検索ではグリコーゲンを含んだ立方状細胞が嚢胞構造をなして増殖しておりsolid typeの膵漿液性嚢胞腺腫と診断された.膵,胆管および門脈の狭窄を認めるsolid type膵漿液性嚢胞腺腫の報告は稀であり,文献的考察を加え報告する.