2003 年 64 巻 12 号 p. 3188-3192
症例は26歳,女性.近医で心窩部痛のため精査した際,腹部超音波検査で左下腹部に径50mm大の腫瘤を指摘され当院へ紹介された. CTおよびMRIでは左腸骨筋にはまり込み,造影で壁とともに淡く濃染される部位を伴う多房性の嚢胞性腫瘤を認めた.後腹膜の充実性成分を伴う嚢胞性腫瘍と診断し,腹腔鏡下に完全摘出を施行した.摘出標本は境界明瞭で,内容は一部混濁した粘液成分であった.組織学的には悪性所見は認めず,後腹膜原発の粘液性嚢胞腺腫と診断された.術前に充実性成分が疑われた部位は無数の小嚢胞が蜂巣状に集合したもので,造影された壁が充実性成分として反映されたものと考えられた.後腹膜原発の嚢胞性腫瘍は稀であり,また術前に良悪性の鑑別は困難とされる.