2003 年 64 巻 3 号 p. 705-709
特発性門脈圧亢進症(IPH)による巨大脾腫に対して脾摘を施行後,門脈内血栓形成を認め,ダナパロイドナトリウム投与を行ったところ血栓消失を得た症例を経験したので報告する.症例は51歳,女性. IPH,脾腫,汎血球減少症のため当院内科にて部分的脾動脈塞栓術(PSE)などの内科的加療を受けてきたが,高度の汎血球減少症,腹部膨満を認め,経時的に悪化傾向を示すため,当科で脾摘を施行した.術後経過は良好であったが,術後の腹部CT検査で術前には存在しなかった門脈内血栓を認め,ダナパロイドナトリウム投与を行ったところ血栓の消失を得た.ダナパロイドナトリウムは投与方法が簡便であり,出血傾向などの副作用を生じない新しい抗凝固剤とされており,今後わが国でも深部静脈血栓症や門脈血栓症などに対する有効な治療剤となりうる可能性が示唆された.