2003 年 64 巻 3 号 p. 724-729
症例は63歳,男性. 1998年2月頃より,左上腹部に違和感を認めていた. 1998年3月,他院にて腹部超音波検査を受け,脾臓に腫瘍を指摘された.精査目的にて当院内科に入院した. CTでは脾臓内に石灰化を伴う腫瘍が認められ,辺縁がわずかに造影された. MRIではT1強調像で等信号, T2強調像で低信号の腫瘍であった.血管造影では腫瘍血管はほとんど認めなかった.脾腫瘍の診断のもと, 1999年6月1日,脾臓摘出術を施行した.摘出した脾臓の重量は345gで,割面では6.0×4.0cm大の黄白色で充実性,境界明瞭な腫瘍が認められた.病理組織学的所見では,腫瘍部はヒアリン化を強く伴った,陳旧性の線維性肉芽腫で,所々に形質細胞の集簇がみられinflammatory pseudotumorと診断した.