2003 年 64 巻 3 号 p. 730-734
症例は53歳,男性.近医にて後腹膜腫瘤の診断で開腹,腫瘤生検時に血圧の上昇を認め手術が中止された.術後検査にて血中,尿中カテコラミンの異常高値を認め,病理組織診断と併せて褐色細胞腫と診断,当院紹介入院,術前腹部超音波検査, CT, MRI検査で肝背側に腫瘤を認め,下大静脈への浸潤が疑われた.両側副腎に異常を認めなかった.下大静脈壁部分切除を伴う副腎外褐色細胞腫摘出術を施行した.摘出標本は6×6×5cm, 66g.表面多結節性,割面分葉状の腫瘤であった.病理組織学的に腫瘍細胞は胞巣状に増生し,周囲脂肪織内への浸潤性増生,静脈侵襲も認め,悪性を示唆する所見であった.以上より,副腎外悪性褐色細胞腫と診断された.術後血中,尿中カテコールアミンは速やかに正常範囲へ低下し,経過良好にて術後19日目に退院した.全褐色細胞腫のうち副腎外悪性褐色細胞腫の頻度は約4%とされているが,その判定基準は必ずしも明確ではない.今回われわれは非常に稀な副腎外悪性褐色細胞腫を経験したが,特に良悪性の判定に関する考案を含めて報告する.