2003 年 64 巻 3 号 p. 762-766
症例は61歳,男性.心窩部痛を主訴に近医受診,胃癌の診断で,当院内科紹介入院となった.入院後消化管精査にて,食道,胃,下行結腸に癌腫を認めた. CTにて肝腫瘍を認め, 3重複癌,肝転移の診断で全身化学療法の後,胃全摘,左半結腸切除,肝部分切除(S5)を施行した.術後診断では肝腫瘍は肝細胞癌で,同時性4重複癌と診断した.食道癌に対しては,放射線療法を施行した.病理学的には食道は中分化型扁平上皮癌(生検),胃は中分化型管状腺癌, T2, N1, Stage II,大腸は高分化型腺癌, sm, n (-), stage I,肝は中分化型肝細胞癌, T2, N0, M0, Stage IIであった.重複癌に対する手術は侵襲が過大となりがちであるが,化学療法,放射線療法と組み合わせることで,侵襲を最低限度にとどめ,良好に経過中である.