2003 年 64 巻 9 号 p. 2125-2128
気腫性嚢胞は肺癌の危険因子の1つと言われているが,胸壁浸潤をきたし切除しえた報告例は少ないので報告する.症例は32歳,男性. 3カ月前よりの右背部痛を主訴に受診.胸部CTにて右上葉S3付近に,巨大気腫性嚢胞壁に接して腫瘤を認め,胸壁浸潤性腫瘍が疑われた. 99mTc骨シンチグラムで,同部位(第三肋骨)に一致してhot spotを認めた.術前確定診断は得られなかったが,嚢胞壁に発生した胸壁浸潤肺癌の疑いにて,手術を行った.術中迅速病理診断の結果,腺癌の診断を得たため,右上葉切除に加え第三,第四肋骨含む胸壁合併切除を施行した.最終病理診断は,低分化型肺腺癌でpT3N0M0 stage IIbであった.術後16カ月目に脳転移をきたしたが,ガンマナイフ治療にてコントロールでき, 2年生存中である.気腫性肺嚢胞の患者を診察する時,それに接する胸壁の変化にも注意して経過観察する必要があると考える.