抄録
症例は54歳,女性.左腋窩の3 cmの腫瘤で紹介され,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診の結果腺癌のリンパ節転移と判明した.しかしその後の全身精査では原発巣が不明で,腋窩リンパ節郭清を施行した.リンパ節のホルモンレセプター陽性で潜在性乳癌が強く疑われたため,本人の希望も考慮し2群郭清を伴う胸筋温存乳房切除術を施行した.術後病理検索で3 mm径のinvasive ductal carcinoma scirrhous typeが判明し,また2群リンパ節陽性(病期IIIA)であったため放射線・内分泌化学療法を行った.
腋窩リンパ節転移を伴う潜在癌の多くは乳癌であり,原発部位の同定に努め病期II以上の乳癌治療に準じるべきである.しかし病巣が不明の場合,上腕浮腫や疼痛の回避,リンパ節のホルモンレセプター検索のためレベルI, IIのリンパ節郭清は必要と考える.また現時点で乳房切除の可否については確立した方針はなく,今後治療の標準化が望まれる.