2004 年 65 巻 12 号 p. 3312-3317
症例は76歳,男性. 2002年6月15日より,肝膿瘍およびそれに伴う敗血症の診断にて当院内科にて入院加療中であった. 6月25日に大量の血性嘔吐を認めるも,腹痛等の訴えはなく,特記すべき腹部所見もみとめなかった.腹部CT検査を施行したところ右腎前部および十二指腸下行脚周囲に気腫を伴う後腹膜膿瘍を認めた.十二指腸後腹膜穿孔の診断にて緊急開腹術を施行した.憩室の存在を念頭においていたが十二指腸下行脚から右腎前面にかけ一塊となった膿瘍腔で,炎症所見も著明であった.膿瘍腔を開放しKocher授動術を行うと,十二指腸下行脚外側に約2×1.5cmの欠損部を認めた.欠損部が大きいこと,周囲の炎症所見が強いことより縫合閉鎖は行わず,有茎大網を充填,また術後の十二指腸狭窄を考慮し胃空腸吻合を併施した.術前より糖尿病のコントロールが悪く, poor riskな症例であったが,良好な術後経過を得たので報告する.