日本臨床外科学会雑誌
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選択的迷走神経切離術後25年目に発症した胃癌の1例
西土井 英昭徳安 成郎池田 光之柴田 俊輔山口 由美工藤 浩史
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2004 年 65 巻 2 号 p. 390-394

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抄録

症例は58歳,男性. 33歳時(25年前)に胃潰瘍にて幽門形成術(Finny法)を伴う選択的迷走神経切離術を受けた.その後, 25年経過し,健診で貧血を指摘され,精査の結果,胃癌と診断され当科紹介となった.前庭部小彎側に3'型の進行癌が発見され,幽門側胃切除術が行われた.切除標本では癌腫は幽門輪および幽門形成部には及ばず,病理組織学的検索では低分化型腺癌,深達度se, ly(o), v(o), stage IIであった.迷切術後の胃癌の報告は少なく本邦で自験例を含めて32例にすぎない.しかし,かつて迷切術は良性潰瘍に対して盛んに行われた術式であり,本術式の晩期合併症として無視できないものである.迷切術後の胃癌は残胃癌,胃空腸吻合術後の胃癌と類似した発生機転も推察され,本邦報告例を集計し,若干の文献的考察を加えて報告する.

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