日本臨床外科学会雑誌
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術前化学放射線療法が著効した進行直腸低分化腺癌の1例
高林 司金井 歳雄川野 幸夫中川 基人坂田 道生
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2004 年 65 巻 2 号 p. 464-468

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抄録

症例は45歳,女性で,血便を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で,直腸の肛門縁より4 cm口側に径6 cmの2型腫瘍を認め,生検組織検査の結果は低分化腺癌であった.骨盤MRI検査では,直腸間膜脂肪織への浸潤を認めた.下部直腸の進行低分化腺癌と診断し,術前化学放射線療法を施行した.全骨盤腔にLinac計40Gyの照射と5FU, LV, CDDPによる全身化学療法を施行したところ,腫瘍は著明に縮小した.前治療の終了3週後に開腹術を施行し,側方リンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術を施行した.切除材料の病理組織検査では,主病巣は瘢痕組織で置換され癌細胞を認めず,リンパ節転移も陰性であり,化学放射線療法の効果判定はGrade 3であった.術後3年10カ月の現在,再発を認めていない.局所再発が多く,予後不良な進行直腸低分化腺癌に対して,術前化学放射線療法は有効な補助療法となる可能性が示唆された.

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