日本臨床外科学会雑誌
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縦隔への膵液瘻に対し瘻孔空腸吻合術を施行した感染性膵壊死の1例
森藤 雅彦村上 義昭竹末 芳生佐々木 秀上神 慎之介末田 泰二郎
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キーワード: 感染性膵壊死, 内膵液瘻
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2004 年 65 巻 2 号 p. 481-486

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抄録

症例は53歳の男性.感染性膵壊死に対してnecrosectomy施行後に外膵液瘻を合併したが,徐々に排液が減少し自然閉鎖した.退院6カ月後に発熱・背部痛・咳嗽を主訴に再入院となり,精査にて膵体部主膵管狭窄と尾側膵管の破綻を認め,縦隔へ波及していた.膵管の狭窄により内圧が上昇して破綻し,後腹膜へ穿破した内膵液瘻と考えた.門脈本幹の閉塞で著明な側副血行路を認め大量出血が危惧されたが,空腸との内瘻化を目的に開腹手術を行い,瘻孔空腸吻合術が施行できた.術後は経過良好で第25病日に退院となった.重症急性膵炎necrosectomy後で残膵機能が乏しく側副血行路の発達した内膵液瘻に対して,瘻孔壁と腸管を吻合しえたとの報告は少ない.高度な癒着と門脈閉塞に伴う大量出血が危惧され外科的対処が困難と思われたが,本術式は膵内分泌機能を含めた残膵機能温存や安全性という面でも有用な方法であった.

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