抄録
大腸癌手術時に腹膜播種を疑った魚骨による大網腫瘤の1例を経験したので報告する.患者は83歳,男性.主訴は腹痛.上行結腸癌と診断され,右半結腸切除術を施行した.大網腫瘤が存在し腹膜播種と判断し小腸部分切除,大網切除を併施した,結腸癌はwell differentiated adenocarcinoma, ss, ly0, v0, n0であり大網腫瘤は魚骨による肉芽腫と診断された.魚骨穿孔は緊急手術症例が多く,慢性型では原因不明の腫瘤と診断されることが多い.本症例では術前には腹腔内腫瘤は診断できなかった. CTを再検討した結果,大網腫瘤に一致して線状石灰化像が確認可能であった.腹腔内腫瘤では過剰な治療を避けるため鑑別疾患を考慮し,画像検査の詳細な再検討が必要である.