2004 年 65 巻 4 号 p. 1004-1007
症例は72歳,女性,近医にて貧血を指摘され,外来を受診し,直腸指診で下部直腸癌と診断された.既往症として内臓逆位症を指摘されていた. CTなどの検査で随伴奇形を認めず,完全内臓逆位症を合併した直腸癌と診断し,腹会陰式直腸切断術を施行した.開腹所見では肝臓は左側に,胃は右側に存在し,完全内臓逆を呈していたが,腸回転異常や血管系の奇形を認めず,手術操作は問題なく行えた.内臓逆位症に合併した直腸癌の報告は本邦で3例目と稀であるため,文献的考察を加え報告する.