2004 年 65 巻 4 号 p. 1022-1026
症例1. 69歳の女性. 1988年死体腎移植術が施行され,免疫抑制療法をうけていた. 1995年腹部超音波検査で肝S8に径6 cmの肝細胞癌を指摘され, HBV肝硬変でICG 15分値32%であったため, TAEが施行された. 1996年両葉に多発再発を認め,再度TAEとPEITを施行したが癌死した.症例2. 72歳の男性. 1990年死体腎移植を施行し,免疫抑制療法をうけていた. 2001年腹部超音波検査でS4の肝細胞癌が指摘された. HBV陽性, ICG 15分値10%,単発性肝細胞癌, T2, N0, M0と診断され,肝左葉切除術をうけた.術後手術侵襲に伴う急性拒絶反応の考慮し,タクロリムスを0.01mg/kg/hrの持続静脈内投与で,血中濃度を20ng/mlと高値に維持された.重篤な合併症なく, 20病日に退院し,術後24カ月現在,腎機能正常で無再発生存中である.