日本臨床外科学会雑誌
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膀胱癌に合併した自己免疫性膵炎の1例
玄 東吉谷畑 英一林 政澤阿美 克典岡本 浩之大槻 将
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2004 年 65 巻 4 号 p. 1050-1055

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抄録

症例は70歳,男性,膀胱癌にて膀胱全摘術後鼠径部リンパ節転移に対し放射線療法施行. 5カ月後閉塞性黄疸出現しPTCD挿入.腹部エコー, CT, PTCD造影検査で下部胆管の閉塞と膵頭部の腫大を認める以外異常はなかった. ERCP検査では膵内胆管の平滑な全周性狭窄を認め, MRI検査で主膵管は膵頭部で狭細化し,膵体尾部では拡張を認めなかった.膵頭部癌も否定できず手術を施行した.膵はびまん性に硬く膵組織の術中迅速病理検査では慢性膵炎と診断され胆管空腸吻合術を施行した.切除胆管と膵の組織像では,著明な線維化とリンパ球や形質細胞の炎症細胞浸潤を認めた.血液検査で好酸球増多症,高γグロブリン血症, IgG高値,自己免疫抗体陽性を示し,自己免疫性膵炎と考えられた. 7カ月後リンパ節転移は再燃し,膀胱癌の骨転移により死亡した.自己免疫性膵炎は下部胆管狭窄による閉塞性黄疸の鑑別診断として重要であり,悪性腫瘍との合併も考慮すべきであると考えられた.

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