日本臨床外科学会雑誌
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術後難治性食道瘻孔に対し,フィブリン糊充填術 -トロンビン希釈注入法-が奏効した症例
岡田 一幸東野 健中野 芳明矢野 浩司門田 卓士
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2004 年 65 巻 4 号 p. 950-953

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抄録

症例は52歳,男性.食道平滑筋腫に対し,胸腔鏡下腫瘍摘出術を施行.術後6日目に腫瘍切除部の縫合不全および胸腔内膿瘍を合併したため,ドレナージ術および排液持続吸引,ドレーン洗浄などの保存的治療を試みたが難治性皮膚瘻を形成した.これに対し,内視鏡下フィブリン糊充填術を計5回行ったところ,回を重ねるごとに膿瘍腔は縮小し,完全閉鎖しえた.当院におけるフィブリン糊充填法は,フィブリノゲン溶液とトロンビン溶液を混合する際に,トロンビン溶液を希釈すると凝固時間が延長するというデータを基に,トロンビン溶液を規定の濃度の20倍に希釈して施行している.本法ではシングルルーメンカテーテルにて,混合液の注入が簡便に行えるとともに,瘻孔の隅々まで行き渡ってから凝固するため,複雑な瘻孔においても死腔を生じる危険が少なく,確実な治療効果が期待できる有用な治療手段であると考えられた.

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