日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
大量下血のため出血性ショックをきたした多発性空腸憩室症の1例
首藤 恭広山本 重孝田中 康博森本 芳和栗原 陽次郎西川 和宏
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 65 巻 4 号 p. 980-983

詳細
抄録

空腸憩室の多くは無症状に経過する.症状を呈する症例のうちでも下血を初発症状とするものは6.6%と少ない.今回憩室からの大量下血のため出血性ショックをきたした稀な症例を報告する.症例は75歳,女性.平成14年6月1日,下血により高度の貧血をきたし出血性ショックの状態で緊急入院した.保存的治療によりショック状態を脱し,出血も軽快した.諸検査にて空腸多発性憩室および憩室からの出血と診断した.平成14年7月3日,開腹術を施行した. Treitz靱帯から28cm~103cmにわたる空腸に大小多数の憩室を認め,これらを含む約80cmの空腸を切除した.病理組織学的所見は,憩室壁の一部に固有筋層の欠損を認める仮性憩室で出血源と思われる露出血管を2カ所に認めた.術後経過は良好で術後第18病日に退院した.小腸出血の診断および治療には難渋する場合が多いが,稀ではあるが空腸憩室からの大量出血の可能性も念頭におくべきと思われる.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top