抄録
90歳以上の超高齢者の大腸癌手術症例における術後経過について検討し, 75~79歳症例22例と比較した.症例は男性2例,女性3例で,年齢は92歳3例, 90歳2例であった.術前, 3例(60%)に腸閉塞を認め,術前のヘモグロビン値は75~79歳症例に比し有意(p<0.01)に低かった.手術は結腸右半切除1例,横行結腸切除+空腸部分切除1例,ハルトマン手術1例,低位前方切除1例,人工肛門造設+経肛門的切除1例を行った.合併症は3例にみられたが,いずれも保存的治療で治癒した.重症の痴呆を除く4例では平均2.2日目に起立し, 3.9日目に歩行でき, 75~79歳症例と比べて有意差はなかった.水分は平均4.8日目,食事は平均7.0日目に開始した.全例が術前の生活に復帰した.超高齢者の大腸癌でも全身状態が良好であれば,術後も75~79歳の症例と同様の良好な経過が期待できるため,積極的に切除を検討すべきと思われた.