2004 年 65 巻 9 号 p. 2315-2318
初回手術時に反回神経切除施行した症例に対して,再手術時に反回神経再建術を行った.症例は72歳,女性.初回手術は甲状腺左葉原発乳頭癌(Ex 2)に対して甲状腺左葉切除,左反回神経切除, D2b郭清を施行された. 5年後に再発甲状腺乳頭癌と診断され手術を行った.術中所見は気管左側の食道入口部に3 cmの再発腫瘍を認め,摘出術を行った.左反回神経は前回手術で合併切除されていたが,下咽頭収縮筋を切開して左反回神経断端を露出した.患側の左頸神経わなも前回手術で切断されていたため,右頸神経わなを用いて右頸神経わな一左反回神経吻合術を行った.術後2-3カ月より自覚的に嗄声が改善し,最長発声時間も経時的に延長した.過去に反回神経切断を行った症例では,再手術時に反回神経を同定することは難しく,神経再建は容易ではない.しかし,下咽頭収縮筋内での吻合方法や対側頸神経わなの利用で再建可能な症例もあり,発声機能改善を目指して試みる価値のある術式と考える.