日本臨床外科学会雑誌
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甲状腺全摘後も甲状腺機能亢進症が持続し, TSH受容体抗体陽性であった甲状腺濾胞癌骨転移の1例
足立 広幸土田 知史韓 仁燮藤井 慶太鹿原 健岩崎 博幸
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2004 年 65 巻 9 号 p. 2319-2324

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抄録

甲状腺全摘後もhyperthyroidismが継続し,バセドウ病抗体(TRAb)が陽性であった甲状腺濾胞癌骨転移の1例を経験したので報告する.症例は58歳女性,左肩甲骨腫瘤と左上肢挙上困難を自覚し当院を受診した.既往で20歳代より甲状腺腫を指摘されていたが放置していた.病理学的検査で甲状腺濾胞癌骨転移と診断し甲状腺全摘術を施行.術後の131Iシンチグラフィーでは右肋骨,腸骨,腰椎に集積を認めたが肩甲骨部の集積はわずかであった.退院時, Levothyroxine投与中でありfT 3, fT 4ともわずかに上昇していたがその後も上昇を続け, TRAb・TSAbともに陽性のためバセドウ病による甲状腺機能亢進症と判断. Levothyroxine減量・Thiamazole投与を開始し甲状腺機能は正常範囲となった.肩甲骨転移腫瘍には増大傾向は見られず, CT上1 cm程度の縮小も見られた.甲状腺全摘後バセドウ病は自験例も含め7例であり,極めて稀な疾患と考えられた.

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