2004 年 65 巻 9 号 p. 2413-2416
魚骨による虫垂穿孔の1例を経験したので報告する.症例は43歳,男性.下腹部痛を主訴に来院した.腹部所見と腹部CT検査所見から糞石を伴う急性虫垂炎と術前診断し,手術を施行した.開腹すると虫垂体部に魚骨様異物による穿孔を認めた.虫垂穿孔部以外の炎症は軽度であり,順行性虫垂切除術を行った.元素分析とその形態から異物は魚骨であると判明した.病理学的検査で虫垂穿孔部以外の粘膜は炎症を認めないことから穿孔性虫垂炎ではなく,魚骨による虫垂穿孔と診断した.魚骨による虫垂穿孔は稀であり,本例は病理学的に虫垂穿孔であることを確認できた興味深い症例であると思われた.