抄録
今回われわれは比較的稀な特発性腸間膜血腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は58歳,男性. 4日前から持続する腹痛を主訴に当院受診.血液生化学検査で炎症所見と軽度の貧血を認め,腹部CTで腹腔内出血が疑われた.翌日,血腫の増大と急激な貧血の進行が認められたため,緊急手術を施行した.開腹したところ,血性腹水を認め,横行結腸間膜右半部に巨大な血腫が認められたが,明らかな出血源は認められなかった.腸管虚血は認められず,血腫除去を行って手術を終了した.術後の血管造影では,責任血管と考えられた中結腸動脈に異常所見は認められなかった.腹部外傷の既往や出血素因はなく,特発性腸間膜血腫と診断された.