日本臨床外科学会雑誌
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絞扼性イレウス術後に発症した右傍十二指腸ヘルニアの1例
青木 浩一山家 仁伊藤 哲哉森 尚秀石津 要
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2005 年 66 巻 10 号 p. 2446-2449

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抄録

症例は50歳,女性で右下腹部痛を主訴に来院した.腹膜刺激症状と腹部CTにて小腸壁の腫脹を認め,絞扼性イレウスの診断にて緊急手術を施行した.小腸間膜と後腹膜の癒着による間隙孔に60cmの回腸が嵌入していた.術後3日目より経口摂取を開始したが,術後10日目より嘔吐が出現した.上部消化管造影では腸回転異常と十二指腸下行脚より肛門側への造影剤の流出が不良であり,腹部CTでは小腸の右側後腹膜腔への嚢状集積像を認めた.以上より右傍十二指腸ヘルニアの診断にて再手術を施行した.右側の傍十二指腸窩に長さ50cmの近位側空腸が嵌入していた.空腸を用手的に整復し,ヘルニア門の縫縮を行った.本疾患は先天性腸回転異常によってできたヘルニア嚢に,後天的に腹腔内圧の上昇や腸管蠕動の異常が加わって発症すると考えられているが,この説を裏付ける症例と思われた.このような経緯をとった報告例はわれわれの検索範囲内では他に見当たらなかった.

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