2005 年 66 巻 11 号 p. 2772-2777
症例は66歳,女性. 1977年7月に特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) と診断され脾臓摘出術を施行するも軽快せず,プレドニゾロン内服を継続していた. 2004年3月下血精査の大腸内視鏡検査で多発大腸ポリープと診断.免疫グロブリン大量投与,ステロイド大量投与で血小板数上昇せず,免疫グロブリン大量先行投与と濃厚血小板輸血後にポリペクトミーを予定した.しかし上行結腸とS状結腸の計3個のポリープは内視鏡的切除は不可能と判断し,さらに免疫グロブリン投与後濃厚血小板輸血を行い,開腹術を施行した. S状結腸ポリープは術後病理診断で深達度smの高分化腺癌と診断した.術後第1, 2病日に免疫グロブリン大量投与と濃厚血小板輸血を行い,血小板数は最高11.9万/μlまで上昇し,術後の経過は良好で第12病日に軽快退院した.免疫グロブリン大量投与とステロイド大量投与が無効であったITP合併S状結腸癌症例に対して,免疫グロブリン大量先行投与と濃厚血小板輸血を行い,安全に手術を施行しえた1例を経験したので報告する.