2005 年 66 巻 12 号 p. 2921-2925
甲状腺びまん性硬化型乳頭癌は,乳頭癌の特殊型に分類される本邦では極めて稀な疾患である.今回,われわれは26歳,男性に発生した甲状腺びまん性硬化型乳頭癌の1例を経験したので報告する.症例は,前頸部腫瘤を主訴に2005年5月初旬に紹介受診となった.初診時甲状腺は両葉ともびまん性に腫大していた.超音波検査所見上,甲状腺両葉に微細な石灰化を認めたが,明らかな腫瘤形成は認められなかった.穿刺吸引細胞診検査でclass V,甲状腺乳頭癌の診断であったため,びまん性硬化型乳頭癌が強く疑われた.外科治療は,甲状腺全摘術および両側頸部リンパ節郭清術が施行された.病理組織学的検査では多数の砂粒腫小体を認め,甲状腺びまん性硬化型乳頭癌と診断された.また,両側頸部リンパ節に多数の転移を認めた.本症例は,病変が明らかな腫瘤として認知されないため,慢性甲状腺炎との鑑別が若年者の場合特に重要と考えられた.