2005 年 66 巻 12 号 p. 2984-2987
症例は50歳の男性.腹痛,嘔吐を主訴に来院し,イレウスの診断で入院となった.イレウスチューブを挿入して保存的に経過観察したが,改善傾向がみられないため開腹手術を施行した. Treitz靱帯から約300cm, Bauhin弁まで約250cmの部位に異所性膵があり,その先端部分が終末回腸の腸間膜に癒着したために起こった空腸の絞扼性イレウスであった.異所性膵と絞扼による狭窄部分を含めた約10cmの回腸を切除,吻合した.病理組織所見では異所膵は膵管,膵腺房細胞,ランゲルハンス島を含んでおり,急性・慢性膵炎の所見はなかった.また,異所膵先端と腸間膜との癒着部分も非特異的な所見のみであった.症状を呈した回腸異所膵の報告例は小児,成人とも腸重積を引き起こしたものがほとんどであり,検索し得る限りでは,先端部分の癒着が絞扼性イレウスの原因になったという報告は本症例が初めてである.