日本臨床外科学会雑誌
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ステント挿入により縦隔炎と食道気管支瘻を形成した腐食性食道炎の1例
牧野 知紀藤谷 和正平尾 素宏辻仲 利政竹田 雅司真能 正幸
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2005 年 66 巻 3 号 p. 622-626

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抄録

66歳,男性.自宅で酸性トイレ洗浄剤を服用し,腐食性食道炎と胃炎による幽門閉塞と食道狭窄を発症.他院にて胃空腸吻合術と多数回の食道ステント留置術を施行されたが,狭窄症状は改善せず,肺炎・縦隔炎を併発.当科入院後,経腸栄養での全身状態改善および誤嚥性肺炎治療のため食道瘻.腸瘻造設術を施行. 1カ月後,幽門側胃切除術,右半結腸食道再建術施行.術後,再建結腸壊死を生じ食道瘻を再造設した. 1カ月後,食道ステントによる食道気管支瘻を認め,胸部食道全摘術および有茎広背筋弁による左気管支瘻閉鎖術を施行. 4カ月後,遊離空腸食道再建術を施行し,食事摂取可能となった.腐食性食道炎に使用した食道ステントにより,縦隔炎および食道気管支瘻からの重症肺炎を併発し,治療に難渋した1例を経験した.腐食性食道炎後の良性瘢痕狭窄に対する食道ステントは重篤な合併症を招くため適応すべきでないと考えられた.

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