2005 年 66 巻 3 号 p. 684-687
肝原発放線菌症は,比較的稀な疾患であるが,肝腫瘤性疾患の鑑別診断においては,考慮すべき疾患の一つと考えられる.今回われわれは,術前肝癌との鑑別に苦慮した肝原発放線菌症の1例を経験したので報告する.症例は, 69歳男性,約20年前胃癌にて胃全摘術を施行されている.約8年前に胆摘術施行されたが,この際,炎症高度なため,胆管損傷し,総肝管十二指腸吻合術も併施された. 2003年7月頃より右上腹部痛あり,近医にて肝右葉の巨大腫瘍を指摘され当科紹介となった. CT,アンギオにて肝S5/6に血管新生を伴う腫瘍を認め,肝癌も.否定出来ず,肝右下区域切除術を施行した.肉眼所見からは,遺残胆嚢粘膜より発生した腺癌が疑われたが,病理組織検査の結果は,放線菌症であった.比較的稀な疾患ではあるが,肝腫瘤性疾患の鑑別においては,放線菌症も考慮に入れる必要が有ると考えられた.