2005 年 66 巻 5 号 p. 1016-1019
症例は57歳,女性. 10年前より子宮癌術後の更年期症状に対しホルモン補充療法受けていたが,定期健診にて乳房の異常を指摘されたため当科を紹介受診となった.視触診,マンモグラフィーでは異常を認めないが,超音波検査では,両側乳房に大きさ0.4~0.5cm, D/W比の高い微小腫瘤像を多発,散在性に認めた.これらに対する超音波ガイド下の細胞診ではいずれもclass IIIの診断であったため,局所麻酔下に腫瘤摘出術(右2カ所,左3カ所)を施行した.この結果,全てに浸潤性乳管癌の診断を得たため,両側乳房切除を施行した.癌巣のER, PgRはいずれも陽性であった.ホルモン補充療法は乳癌発生のリスク因子であることが指摘されている.今回われわれは,ホルモン補充療法経過中に診断された非触知両側多発性乳癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.