2005 年 66 巻 5 号 p. 1130-1134
患者は67歳の男性.主訴は下血,近医で直腸に腫瘍を指摘された.当院にて直腸原発の腺癌と扁平上皮癌の重複癌と診断し,腺癌に対し経肛門的腫瘍切除を,扁平上皮癌に対し低位前方切除を施行し,術後にUFTとCDDPによる化学療法を行った.術後3カ月目に直腸下部後壁に扁平上皮癌の再発を認め,腹会陰式直腸切断術を行った.仙骨前面に浸潤を認めたため,仙骨部に対し放射線50Gyと5-FU・カルボプラチンの動注を行ったが経過中に肝転移し,術後15カ月目に死亡した.大腸原発の扁平上皮癌は予後が悪く手術だけでなく集学的な治療が必要と思われるが,稀な疾患なために有効な治療法が確立されていない.僅かに放射線療法が有効な場合があると思われた.自験例は術中の操作でimplantationにより再発したと思われる.術式には十分注意すべきである.