症例は43歳,男性. 27歳時に,家族歴および筋生検の結果よりBecker型筋ジストロフィーを指摘されていた.今回摂食不良にて当院受診,精査の結果胃癌と診断され,胃全摘術を施行した.
るいそうや血清CK値の上昇は認めたが,著明な筋力低下や歩行障害といった筋ジストロフィーにみられる徴候はなかった.遺伝子検査を施行したところ, dystrophin遺伝子の欠失を認め, Becker型筋ジストロフィーを示唆する所見が得られた.筋ジストロフィー患者は一般的に短命であり,死因として呼吸不全や心不全が多い.手術を行う際にも,術中・術後の呼吸器および循環器系の合併症に注意する必要がある.